| ○○ ホーチミン市カンザー ○○ ベトナム南部最大の都市、ホーチミン市。そこからさらに南へ55キロメートルにカンザー地区があります。ここカンザーはベトナム戦争の時に、アメリカ軍の枯葉剤作戦でベトナム全土の中でも、最悪の森林破壊を受けた地区です。ジャングルの中でのゲリラの出没に手を焼いた米軍は、ゲリラの隠れ場所がないように森ごとなくしてしまう作戦を実行したのです。その結果、森は壊滅し鳥や動物や魚にとっても致命的な影響を考えました。
そして1975年にベトナム戦争が終ってすぐ、1978年から本格的な植林計画が始まりました。それから、約20年かけて、いままでに人の手によって植えられた広さは約2万ヘクタールになると言われます。実際に今、われわれがその広さのマングロープの森を見ると、これが全部人間の手で植えられたものだとはとうてい信じられない規模のものです。その森の中を歩いていると、遠くから小鳥のさえずりが聞こえ、ときに樹齢100年は越えていそうな枯れた,大きなマングロープの木の根と出会います。かってはこの辺りにもこのような大木がうっそうと茂っていたのだと感じさせてくれます。
「マングロープを失えはすべてを失うということわざがあるほど、ベトナムの海岸地帯に住んでいる人たちの生活に、マングロープ森は深く、大きく関係しています。マングロープ森は海岸が波で侵食されるのを防いだり、高潮の被害から土地を守るなど、河口や海岸線の保全に大きな役割を果たしています。またさまざまな動物、鳥、魚、昆虫類など多数の生物が生きていけるのもマングロープ森のおかげなのです。
そのマングロープ森がインドシナ戦争、ベトナム戦争の爆撃や枯葉剤により破壊され、多くの尊い人命とともに、貴重な動植物や、環境生態系が失われました。そしてベトナム戦争終結後まもなく、1978年から本格的なマングロープ植林事業が地元主民の手で進められその多くが復元されました。しかし、近年輸出用主に日本向けのエビ養殖池や塩田、米の栽培のため大規模な伐採が行われ、戦後植林されたマングロープさえも破壊されてくるようになったのです。しかしながらマングロープを失って初めて、ようやくその大切さを知った人々はいまふたたびマングロープ林を再生させようと試みています.
そしていま世界のいたるところで進行している環境破壊に対して地球規模でのマングロープ植林の推進を目的として1992年にアクトマン(マングロープ植林行動計画。本社東京代表。向後元彦)が設立されました。地球規模でのマングロープ植林推進という壮大なテーマをアジアではベトナムで具体的に進めていこうという、そのアクトマンの活動に対して、日本学習塾(株)ティェラも賛同し積極的に支援。協力をしていくことになったのです。そしてその候補地としてベトナムのカンザーが選ばれました。
この活動にベトナム。カンザーを選んだのには理由があります。
1つ目は注目度。ベトナム戦争はいまも世界中の人々の記憶に残るもので、アメリカの枯葉剤作戦は戦後あらわれてきた後遺症,含め、史上初の大規模な環境破壊として知られています。実際カンザーでは戦争中の5年間に299回の枯葉剤が撒かれました。
2つ目は自助努力と技術力。ベトナム戦争後、国の指導下でマングロープの植林が全国規模で行われ、また村レベルでも自発的に植林が行われた結果全国に植林技術が広がりました。このカンザーはその植林の指導的役割を果たして来た経験があること。
3つ目は国際協力への要望です。近年の経済開放政策によって外国企業の投資のみならず、マングロープ植林への支援が側から求められるようになったことです。
ホーチミン市カンザー地区(面積7万ヘクタール、人口約5万人)では、「人間活動とマングロープの共生」をはかるプロジェクトをはじめました。ここのマングロープ林はベトナム戦争ときに米軍の枯葉剤作戦で壊滅的被害を受けたのですが、地元の人々と植林によって2万平方ヘクタールの森が再生されました。この森を守るために日本側に今学術的、経済的な支援が求められているのです。そしてこの地区一帯を保護区とし、マングロープの安易な伐採を禁じ、かってこの地区に生息していた動物たち(猿、蛇、ワニ、イノシシ、カワウリなど)を森に甦らせるための動物園の建設と、カンザー地区の歴史、芸術、文化、生活、動植物を展示した博物館の建設をいま進めています。このプロジェクトを一時的なもので終わらせるのではなく今後も持続、発展できるものにするには、マングロープの生態系を守るだけではなく、ベトナム地域社会、特にこのカンザー地区に役立つものではなければいけません。いろいろな話し合いを重ねた結果、マングロープ森の中にセミナーハウスと宿舎を建設し、その施設を世界中の環境保護団体や、学校、企業、自治体の研修や会議、学術調査などに利用してもらうという構想が生まれました。
四方をみどりのマングロープの森に囲まれた、このセミナーハウスを宿舎兼研究
施設の拠点として、植林活動、環境保護や生態系保存についての学習、調査、研究活動を繰り広げ、それをねらいとした「エコツアー(自然環境や、地域の社会環境に悪影響を与えない旅行)の実施をすすめる。その動きと同時に地域主民の持続可能なマングロープ森利用のノウハウを確立し、従来のエビ池や薪炭ではマングロープ森の壊滅につながり、最終的には自分たちの生活を脅かすことにつながるのだという啓蒙活動を行なっていく。ここで、そのノウハウを確立しその「モデルパターン」が出来れば世界の人がそれを学んで自分の国の環境保護に応用できるというわけです。
カンザーでこのプロジェクトを行うさらに大きな理由はマングロープの絶滅?植林?再生?保全という自然の循環が短期間のうちに実際にあったということ。マングロープ森利用と生態系保護の調和のモデルになる可能性を秘めていること。ホーチミン市から約2時間半の所にあり、日帰りでも可能な距離でもありながら農漁村の匂いを色濃く残し、われわれ外国人とったもベトナムの都会と田舎の生活の違いが興味を引くことなどです。
カンザー人民委員会は施設の建設用地として、百ヘクタール、約1キロ四方の土地を提供してくれました。今、5棟のセミナーハウスが完成しています。今後日本やベトナムの子供たち、そしてゆくゆくはアジア、世界各国の子供たちがここカンザーに集まって。地球問題について一緒に考える環境問題の世界への発言基地になればと願うのです。
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